美姫３位！４回転封印裏目…スケートアメリカ

◆フィギュアスケートＧＰシリーズ第１戦　スケートアメリカ最終日（２６日、米ワシントン州エバレット）　女子フリーを行い、ショートプログラム（ＳＰ）２位の安藤美姫（２０）＝トヨタ自動車＝は大技の４回転サルコーに挑戦せず、フリー３位の合計１６８・４２点で３位に終わった。同じ楽曲「ジゼル」を使用した中野友加里（２３）＝プリンスホテル＝はトリプルアクセル（３回転半ジャンプ）を回避したが、フリー２位で１７２・５３点の２位と明暗を分けた。ＧＰファイナル２連覇中の金妍兒（キム・ヨナ、１８）＝韓国＝が１９３・４５点で圧勝した。

　“伝家の宝刀”を抜くことはできなかった。ミキティは４回転ジャンプを「全試合で跳ぶ」と公言し、当日朝の練習でも曲をかけて調整した。しかしモロゾフ・コーチに「無難に行こう」と諭され、封印を決めた。

　昨季のＮＨＫ杯で、モロゾフ氏の指示に反して挑んだ２連続３回転を失敗。４位に終わり、上位６人が進むＧＰファイナルを逃した苦い思い出がある。しかもＳＰを終え首位の金とは大差があった。基礎点１０・３点の大技の４回転は大会前の練習で何度も成功しているが、無理に逆転を狙うよりＧＰファイナルにつながる３位以内を確保する作戦なのか、安全策をとった。「今回の彼の選択は正しかった。結果には満足している」と不満な顔は見せなかった。

　その安全策で臨んだはずのフリーだが、初披露のせいか細かいミスが目立った。冒頭の２連続３回転ジャンプは回転不足を取られ、最初のスピンは最低レベル１がついた。体勢が崩れたスパイラルはレベル２の評価。表現力を示す５項目の構成点の得点も伸びず、「技のつなぎ」は５・６５点と特に低かった。技術点は中野を上回ったが、構成点で逆転され、ＳＰ２位から３位に終わった。

　実は偶然にも、フリーで使ったバレエの代表作「ジゼル」の楽曲を中野も使用。同じ国のトップ選手の演目が重なることは異例で、外国メディアからも質問が飛んだ。中野は後半にバレエの動きを取り入れ、ミキティは曲調からイメージできる世界を自分なりに表現。「曲の解釈」では中野が７・１５点だったのに対し６・５５点だったが「違いを楽しめるし、お互い『もっといいジゼルを』と思っているはず」と相乗効果を期待した。

　３月の世界選手権を途中棄権し、一時は引退まで考えたが、大崩れせずに演じきったことで笑顔と自信が戻った。「ファイナルにつながる順位でホッとした。次の中国杯（１１月６～８日）では（４回転を）やる」。試合では０３年１２月の全日本選手権以来の成功で、真の“女王復活”を目指す。

　◆ジゼル　フランスの舞台音楽家アドルフ・アダン作曲のバレエ作品。１８４１年にパリのオペラ座で初演され、ロマンチックバレエの最高峰として世界で広く上演されている。オーストリア地方の伝説に着想を得た２幕の物語で、昼間の森を描く第１幕と夜の場面の第２幕が対照的。死んで精霊になっても、恋人へのいちずな愛を貫く主人公ジゼルの姿を描く。

参照元：スポーツ報知