スパジュニ、ファンと交流…２度目来日

北京五輪で日本ボート界の悲願、初のメダルを狙う軽量級ダブルスカル代表の男女２組が９日、岩手・花巻市田瀬湖での最終強化合宿を公開。４大会連続出場の武田大作（３４）＝ダイキ＝は堂々の金獲得を宣言した。００年シドニー、０４年アテネで日本選手最高の６位入賞。メダルを射程内にとらえた愛媛ミカン農家出身の“未完の大器”が、歴史を塗り替える快挙に挑む。

　日本ボート界の悲願は、ミカン農家出身の雑草男に託された。田瀬湖での強化合宿はこの日で１０日目。最後の追い込みで疲労もピークながら武田は「前回以上の成績は当然。やる以上は一番を取る。金メダルを目指しますよ」と笑顔で言い切った。

　ボートは、日本が五輪に初参加した１９２８年アムステルダム大会から一度も出場が途切れてない伝統競技だが、武田たちの登場までは予選落ちの連続。海外勢に数百メートル以上も離される日本艇を五輪で見るには２００メートルの横長テレビが必要と風刺漫画にされたこともあった。屈辱の８０年史。そのピリオドを打つ重大任務は、４人の子供を持ち１８年の競技歴を誇る筋骨隆々の“超合筋パパ”に託された。

　「家族が支え」という武田。“できちゃった婚”で実家から勘当されかけたそうだが、レース後は必ず結婚指輪にキスをする家庭人だ。日本協会に毎年提出する選手登録用紙に家族全員の名前も入れる。監督、コーチの記述欄を形式的に埋めるためだが、家族と戦う気持ちが強い。昨年は長女・皐月ちゃん（７）が監督で、コーチは二女の京子ちゃん（２）。長男の大吾くん（１０）がマネジャーで二男・大地くん（９）はお休みとか。「うちは毎年、監督とコーチが変わるよ」と笑った。

　子供をコーチにする理由も分かる。金欠体質の日本協会がアテネ五輪後にようやく全面支援に出たが、それまで一人ぼっち。独学でのし上がってきた。ミカン農家を継ぐため進学した農業高校でボートを始めたが、ミカンの繁忙期になるとコーチがいなくなる弱小クラブ。大学に進学しても環境は変わらず、瀬戸内海の荒波に一人出て、オールをこぎ、世界に負けない体を鍛えた。日本協会も「金庫がカラッポになるのを覚悟」で全力支援。金メダル請負人のイタリア人コーチを招へいし、五輪の報奨金は金メダルで３００万円、銀は１００万円、銅が５０万円を一人ずつに出すことを決めた。

北京で男子は２０か国が参加。日本を含む上位９か国が横一線の実力で、残り１か月の合宿での成果が大きく影響する。力を使い果たしてゴール後に失神することをボートでは「ローアウト」と呼び、失神こそボートの真骨頂とも言われる。引退後はミカン農家を継ぐ予定という武田。日本ボート界の悲願を失神覚悟でつかみ取る。

　◆武田　大作（たけだ・だいさく）１９７３年１２月５日、愛媛・伊予市生まれ。３４歳。ボート競技は愛媛大農学部付農高から。全日本選手権９度優勝。２３歳で９６年アトランタ大会にシングルスカルで五輪初出場。２０００年シドニーでは長谷等（中部電力）と、０４年アテネは今回と同じ浦とのダブルスカルで日本人選手最高の６位入賞を果たした。家族は素子夫人と２男２女。１７８センチ、７２キロ。

　◆軽量級ダブルスカル　競技普及のため２０００年シドニー五輪から採用。各人が両サイドのオールを操るスカル種目の２人乗りで、２０００メートルで順位を争う。体重制限は男子が１人平均７０キロで女子は５７キロ。欧州勢に肉体的に劣るアジア、南米選手のための種目とも言われるが、欧米勢も減量を克服して進出してきている。競技艇は重さ２７キロ以上という以外、長さ、幅に規定はない。日本艇は長さ１２．５メートル、最大幅は４０センチ、重さ２７．５キロ。

　◆北京五輪ボート競技　日本が出場する男女の軽量級ダブルスカルは８月１０日に予選が行われ、１４日に準決勝、上位６組に絞られた決勝は１７日に行われる。男子は２０か国、女子は１７か国が出場。開催地は選手村のある北京市内から５０キロ離れた順義。移動に不便なため日本代表は会場近くの一軒家を借りて活動する。
４大会連続出場２連続６位入賞

参照元：スポーツ報知