土佐豊、史上最速タイ関取…再生目指す時津風部屋に希望の星

大相撲春場所（３月９日初日、大阪府立体育会館）の番付編成会議が３０日、両国国技館で開かれ、東幕下４枚目・土佐豊（２２）＝時津風＝と西幕下３枚目・北勝国（２２）＝八角＝の新十両昇進が決定した。土佐豊は初土俵から所要６場所で、７９年秋昇進の高鉄山（元小結・板井）と並ぶ史上最速記録。力士死亡問題で揺れる時津風部屋にとっては再生への大きな希望となった。再十両は東幕下筆頭の旭南海（３０）＝大島＝と同２枚目の磋牙司（２６）＝入間川＝。

　逆風を力に　貴乃花も朝青龍も１０場所を要した。平成の大横綱を上回るスピード出世を果たした土佐豊は、両国の時津風部屋で行われた昇進会見に水色の着物で臨み「うれしい気持ちでいっぱいです」と興奮で声を震わせながら切れ長の目を細めた。

　名古屋で序二段、秋に三段目、九州で幕下を制した。勝負の初場所では、７９年に高鉄山が樹立した所要６場所の十両昇進最速タイ記録に挑み、一番相撲から５連勝。史上最高を更新する序ノ口から３０連勝を果たした。

　だが、その後は２連敗。「もうダメだと思ってずっと眠れなかった」。あきらめかけたからこそ、喜びは大きかった。電話で吉報を受けると、師匠の時津風親方（元幕内・時津海）の部屋のドアを力いっぱい叩いた。「いきなりドンドン鳴るからびっくりだよ」と親方。師匠への礼儀を忘れるほどの興奮だった。

　逆風をバネにした。昨年名古屋場所前に、兄弟子らによる暴行で序ノ口力士が死亡。前師匠は解雇され、大問題に発展した。心労から夏には体重も７キロ落ちた。捜査の心労で九州から休場する兄弟子３人のためにも白星を重ねた。「少しでも部屋が明るくなれば」。ひたむきな思いが２９年ぶりの大記録を導いた。

　得意は四つ相撲。特に強烈なつり技に個性が光る。会見後にはふるさとの高知へ帰郷。相撲を始めたのは昨年２月３日に８４歳で亡くなった祖父・森下隆治さんの影響が大きい。しこ名の「豊」は戒名からもらった。「おじいちゃんにいい報告ができます。春場所は勝ち越したい」。外国人パワーが席巻する土俵で、楽しみな星が誕生した。

　◆土佐豊　祐哉（とさゆたか・ゆうや）本名・森下祐哉。１９８５年３月１０日、高知県土佐市生まれ。２２歳。高知工高で高校横綱。東農大で４冠を獲得も、全日本選手権など主要大会を制覇できず幕下付け出しの資格を得られなかった。昨年春場所初土俵。同名古屋で序二段を制し、秋で三段目、九州で幕下と３場所連続で各段優勝。１７８センチ、１３４キロ。得意は右四つ、投げ。

参照元：スポーツ報知