野村引退へ 北京落選、五輪４連覇断たれ心の支え消えた

◆柔道北京五輪代表選考会　全日本選抜体重別選手権最終日（６日・福岡国際センター）　男子６０キロ級で五輪３連覇中だった野村忠宏（３３）＝ミキハウス＝が現役を引退することが６日、確実となった。５日の準決勝で敗れ、この日の強化委員会の選考の結果、北京五輪代表候補から落選。史上４人目の五輪個人種目４連覇への道を断たれ、競技生活を終えることになりそうだ。

　五輪最終選考会となった前日の体重別選手権準決勝で敗れた野村は、この日の強化委員会の選考結果を待ったが、結果は落選。「集大成の北京で最後」と、今回の五輪で柔道生活にピリオドを打つ決意を口にしていただけに、引退することは確実となった。今後については、日を改めて会見する予定だ。

　野村は初出場のアトランタ五輪で金メダルを獲得すると、シドニー五輪、アテネ五輪でも金メダル。アテネ五輪後にも引退を考えたが、２００６年に長男・基晴くん（２）が誕生し、「子供に五輪で勝つ姿を見せたい」と北京へ気持ちをつなげた。だが、北京への道を絶たれたことで決意は固まったはず。前日の敗戦を見守った妻の葉子さん（３４）は「（進退は）本人次第。シドニーやアテネの後も自分で決めていました」と夫に一存する気持ちを話していた。

　大記録を残しながら、五輪のたびに同じ日に試合がある谷亮子の活躍の方に注目が集まっていた。「４連覇と“ママでも金”はどっちが（注目度で）勝つのかな」と言いながらも、今度こそ谷を超える自信はあった。昨年５月、選手生命にかかわる右ひざじん帯断裂の故障を負いながら、選考会に間に合わせたのも、陸上男子走り幅跳びのカール・ルイス（米国）ら過去に３人しか達成していない４連覇という目標があったから。“最後の五輪”という心の支えがなくなり、現役にこだわる理由は少なくなった。

　五輪代表候補には、１０歳下の平岡が選出された。わずかな望みにかけて選考結果を待ったが、落選の報を聞くと、華やかな代表会見に背を向けて会場を後に。五輪無敗のまま現役生活を終える。

　◆野村　忠宏（のむら・ただひろ）１９７４年１２月１０日、奈良県出身。３３歳。叔父の豊和氏は７２年ミュンヘン五輪金メダリスト。９６年アトランタ、００年シドニー、０４年アテネと五輪３連覇。世界選手権は９７年に優勝。得意は背負い投げ。奈良教大大学院出、ミキハウス。１６４センチ。

　◆平岡誓った金　○…野村を抑えて代表候補に選ばれた平岡は「（昨夜は）ほとんど眠れなかった」とホッと息をついた。斉藤仁監督は「平岡は若いだけではなく、結果も出した」と、昨年末から主要大会を続けて制したことを評価した。まだ、アジア選手権が残っているが、「命がけで北京で金メダルを取りたい」と日本としての五輪“Ｖ４”を達成すると誓った。

参照元：スポーツ報知