室伏が陸上界初！「自作五輪壮行試合」

◆ハンマー投げチャレンジカップ（２１日、愛知県豊田市中京大陸上競技場）　室伏プロデュースの公式戦で、五輪へ順調な仕上がりを見せた。陸上男子ハンマー投げアテネ五輪金メダリストで、北京五輪代表の室伏広治（３３）＝ミズノ＝が、本人が希望し最終調整のために新設された陸上界初の「自作五輪壮行試合」に出場。４投目こそファウルだったものの、３投目に今季世界ランク３位相当の８１メートル８７を投げ、圧勝。成功した５投すべてで８０メートルを超える安定感を示すなど、順調な調整をアピールした。

　五輪連覇への最終調整のために、大会をひとつ作ってしまった。“鉄球王”室伏ならではの、前例のないスケールの大きさだ。

　もともとこの時期、適当なハンマー投げの大会が国内になかったことから始まる。例年は、欧州遠征で２、３試合出場するのが通例なのだが、今季は春先に腰を痛めた影響もあり米国合宿を取りやめるなど、長期移動による負担を避けてきた。所属先のミズノによると、今回は「時差調整で時間もかかるので、遠征はよくない」と判断。それでも、試合の緊張感の中で調整をしたいと考えた室伏は、今季初戦だった６月末の日本選手権後、母校の中京大などに相談し、試合開催が決まった。

　イベント的な大会ではない真剣勝負。愛知陸協からは公式審判員が参加し、使用するハンマーの重さなどの測定も公式大会同様。同陸協の稲垣裕総務委員長によると、記録員、アナウンサーも含めれば１７人のスタッフは、１種目だけの大会ということを考えると、「多い方」だという。しかも、予選、決勝が２日間に分けて行われる五輪本番に合わせて、今大会も２１日、２７日と２日に分けて行われる。まさに、「五輪シミュレーション大会」だ。

　４年前のアテネ五輪前は、同時期に山梨県で行われた短距離の大会にハンマー投げ種目を追加してもらい、調整出場したことがあるが、まったくの新設大会となると、「聞いたことがないですね」（稲垣委員長）。通常、計画から日本陸連の公認までは３か月以上かかるが、今回は２週間ほどで決まった。中京大からは競技場が無償で貸し出され、招待選手も交通費だけで参加した。全員が室伏の連覇に期待し、“手弁当”で大会を盛り上げた。

　連覇のあかつきには、大会が恒例化し、「室伏杯」となる可能性もありそう。昨夏の大阪世界陸上６位入賞で五輪内定を得て、その後は腰の具合が悪く公式戦出場は日本選手権だけ。この大会がなければ、わずか１戦で、北京本番を迎える羽目になっていた。室伏の念願がかない、８０メートル超えともども満足そうに鉄球を投じていた。

　◆過去の自作の主な大会　４００メートル障害の為末大（ＡＰＦ）が計画し、２００７年５月に東京・丸の内のオフィス街で行った大会がある。だが、これは陸上普及のためのイベント。他競技の北京五輪壮行試合では、バドミントンの池田信太郎、坂本修一組が所属する日本ユニシスが、今年６月に都内で中国組との壮行試合を開催した。これもエキシビションで、室伏が考案した正式な公認大会となると、過去に例がない。

参照元：スポーツ報知