伊達複活Ｖ！シングルス決勝惜敗もダブルスで１２年ぶり…女子テニス

◆国際女子オープンテニス　カンガルー杯２００８最終日（４日、岐阜長良川テニスプラザ）　現役復帰したクルム伊達公子（３７）＝フリー＝が、奈良くるみ（１６）＝大産大付高＝と組んだダブルスで優勝した。シングルスも含めた国内大会では１９９６年８月の東芝クラシック以来の頂点。シングルス決勝は世界８６位のタマリネ・タナスガーン（タイ）に６―４、５―７、２―６で敗れたが、例年比２倍の観客を集めた貫録の復活劇場。人気＆実力健在を証明したスーパーウーマンは、日本女子テニス界の将来のため最強の壁になる。

　スーパータイブレークにもつれ込んだダブルス決勝。ラストは奈良がボレーショットを決め、クルム伊達は母・昌子さんのいる観客席に向かってガッツポーズ。「父もきっと再チャレンジをどこかで見てくれている」と言葉を詰まらせた。久々の雄姿は昨年１１月に死去した父・寿一（じゅいち）さんにささげた。

　本人も「出来すぎ」という単複決勝進出。それでも午前のシングルス決勝は悔しさもにじむ。第２シードのタマリネを相手に第２セット第３ゲームを、４０―０からミスをきっかけに奪われ、ここから形勢逆転。「一気に行くべきところだった。勝負の怖さを知った。しくじったなあ、と」勝敗を分けたポイントを何度も繰り返して反省した。

　復活を決めていた昨年の冬。練習に付き添ってくれた恩師で日本テニス協会の小浦武志強化本部長と「最後まであきらめない姿勢を１年間続ける」と約束した。支えになったのは家族の存在。「プレーヤーとして結婚でのマイナスはひとつもない。夫は最強のサポーター」１２年前とは違う精神的な強さも強調した。

　コート外も独壇場だった。観客は６日間延べ２万５００人と例年の２倍に膨れあがり、杉山が出場した昨年に続いて整理券の抽選を実施すると、１週間の応募期間に１万通以上が殺到。「想像を超える反響です」と実力と同様変わらぬ“伊達効果”に関係者も驚いた。

　６日から福岡国際女子に参戦する伊達はコーチの小浦強化本部長とのタッグを再結成。「自分のテクニックをどれだけ引き出すか、緊張感を乗り越えるか。次からの試合で示していきたい」打倒・伊達の挑戦状を叩きつけられるまで、ベテランの戦いは終わらない。

　ミハエル・クルム（伊達の夫で自動車レーサー）「公子が決勝に残れて大変うれしい。テニスに打ち込んでいる姿はとても幸せそう。彼女のチャレンジはけたが違う。ブランクがあり年齢も３０代後半だというのに、とても勇気がある」

　◆今後の伊達　○…６日から福岡国際女子、１３日から久留米市ベストアメニティ杯国際に参加予定。１１月の全日本選手権出場を目標にしているが、日本ランク入りするためには３週連続で大会に出場することが条件となる。今回の準優勝で獲得したＷＴＡポイントは２８点で、３０点以上で出場権を獲得する見込みだ。

　◆奈良、伊達超えいつかは　○…１６歳のホープが未来の伊達超えを誓った。３日の試合ではサーブミスが目立ち、終了後に夕方から猛練習。ダブルス決勝では積極的に動いて鋭いショットを披露し、「自分でもいいプレーができた」とはにかんだ。メンタル面の強さを買われてコンビに抜てきされ、優勝スピーチでは「伊達さんに追いつくのはまだだけど、世界で活躍できるように頑張りたい」と話し、拍手を浴びていた。

　◆“反対派”だった浅越さん苦笑い　○…園田学園高の後輩で、一昨年引退した浅越しのぶさん（３１）は伊達復帰の“反対派”だったことを明かした。予選に続いて観戦し、「最初は、やめた方がいいんじゃない？と言ったんですけど、ここまで来たら超人、鉄人ですね」と苦笑い。自身はこの大会で２度のシングルス優勝実績があるだけに「ここのコートは足に来て疲れるんですけど、無駄な動きが少ない。コースの読みはさすが」と感嘆の声をあげていた。

参照元：スポーツ報知