ハリントン、プレーオフ制しメジャー初優勝…全英オープン最終日

◆男子ゴルフ今季メジャー第３戦　第１３６回全英オープン最終日（２２日・英国カーヌスティ・リンクス、パー７１）　通算７アンダーとしたパドレイグ・ハリントン（３５）＝アイルランド＝が、セルヒオ・ガルシア（２７）＝スペイン＝との４ホールストロークプレーによるプレーオフを制し、メジャー初優勝を果たした。アイルランド選手としては６０年ぶり２人目の全英制覇で、１９９９年の全英を制したポール・ローリー（英国）以来となる欧州からのメジャー大会優勝者となった。大会３連覇を狙ったタイガー・ウッズ（３１）＝米国＝は２アンダー１２位。日本勢でただ一人予選を突破した谷口徹（３９）＝フリー＝は、１２オーバー６０位に終わった。

　プレーオフ最終ホールの１８番。ハリントンがウイニングパットを決めると、地鳴りのような大歓声がわき起こった。隣国・アイルランドのヒーローは、息子のパトリック君、妻のキャロラインさんと熱い抱擁を交わすと、国旗を振って何度も歓声に応えた。

　銀製の優勝トロフィーは、壊れないかどうかを確かめてから、大事に大事に掲げた。「とても長くて厳しい戦いだった。もう勝てないかもしれないと思ったよ。でも、最後まで自分を信じたんだ」。涙で声を詰まらせたスピーチを終えると、バンザイしながらグリーンの周囲を回った。

　「バンデベルデの悲劇」を再現しかけた。１打差の単独首位で迎えた最終ラウンドの１８番。ドライバーで放った１打目は、右へ曲がって名物クリーク「バリーバーン」へ。ピンまで残り約２１５ヤードの３打目も、グリーン手前を横切る小川へ消えた。しかし、５打目をピン奥約１メートルに寄せると、これをねじこんでダブルボギー。ガルシアが１８番をボギーとしたため、なんとか生き残った。

　１８番の大叩きで首位から陥落し、プレーオフに突入したところまではバンデベルデと同じ。だが、昨年の欧州ツアーで賞金王に輝いた世界ランク１０位の実力者は、ここからが違った。１ホール目の１番でバーディーを奪い、ボギーとしたガルシアに２打差をつけると、この日２度目の１８番は、クリークを慎重に避け、手堅く刻んでボギー。追いすがるガルシアを振り切った。

　「もしあのまま負けたら、ゴルフを続けられたか分からない」。１３６回目となった全英オープン。歴史と伝統のつまった今大会で、アイルランド人が勝ったのは、４７年大会のフレッド・デーリー以来、実に６０年ぶり２人目のこと。昨年のダンロップフェニックスでウッズを倒してアイルランドの英雄となった３５歳が、ついに世界の頂点をつかんだ。

　◆パドレイグ・ハリントン　１９７１年８月３１日、アイルランド・ダブリン生まれ。３５歳。コースを設計する仕事をしていた父の影響で４歳からゴルフを始める。９５年にプロ入り。翌年から欧州ツアーに参戦し、昨年までに通算１１勝。０５年には米ツアーでも２勝。昨年は日本ツアーのダンロップフェニックスで、プレーオフでタイガー・ウッズを破って優勝したほか、欧州ツアーでも賞金王。世界各地での通算勝利数はこれで２０。家族は妻と１男。１８５センチ、８３キロ。

　◆ガルシア失速初Ｖならず…　３日目まで首位の座を守っていた「神の子」ガルシアの念願のメジャー初Ｖはならなかった。最終ラウンドの１８番を迎えた時点では首位。だが、２打目をバンカーに入れると、約２メートルのパーパットを決められず、痛恨のボギー。プレーオフ１ホール目の１番でもバンカーに入れた末にボギーを叩くなど、肝心なところでショットが乱れた。「大きな失敗はしていない。仕方のない結果だ」と強がる姿が痛々しかった。
  今大会の開幕直前に、同じスペイン出身で、「理想の存在」だというセベ・バレステロス（５０）が現役引退を表明した。スペインの後継者として、期待を一身に集めただけに、なんとしても勝ちたかった。１８番のハリントンの悲劇で、勝利は目の前まで転がり込んでいたように思えたが、悲劇はガルシアにも待っていた。

参照元：スポーツ報知