長谷川Ｖ５！原田、薬師寺超えバンタム級最多記録！…報知新聞社後援ダブル世界戦

◆報知新聞社後援　ＷＢＣ世界バンタム級タイトルマッチ　○長谷川穂積＝王者＝（判定　３－０）シモーネ・マルドロット＝挑戦者＝●（１０日・大阪府立体育会館）　ＷＢＣ世界バンタム級王者・長谷川穂積（２７）＝真正＝が歴史に名を刻んだ。２回に右目上を切って大量流血しながら、同級１位シモーネ・マルドロット（２９）＝イタリア＝に大差判定勝ち。同級の日本人王者としてはファイティング原田、薬師寺保栄を超える５度目の防衛に成功した。また、ＷＢＡ同級王座に初挑戦した池原信遂（３１）＝大阪帝拳＝は無敗王者ウラジーミル・シドレンコ（３１）＝ウクライナ＝に判定で敗れた。（観衆６０００）

　フランケンシュタインと化した長谷川がリングの上でまた謝った。「パッとする内容じゃなかった。申し訳ない」満足したのはジムの旗揚げ興行を勝利で飾ったことだけ。それでも観衆はバンタム級防衛記録を樹立したヒーローをスタンディングオベーションでたたえた。

　右まぶたの上から流れ続けた鮮血がＫＯ劇を封じた。２回だ。偶然のバッティングと思われた裂傷は最強挑戦者の左パンチによるものと判定。３回以降、顔の半分をしたたり落ちる血が視界を遮る。「前に行かな。でもいつ止められるか」傷口が広がれば、ドクターストップでの負傷ＴＫＯ負け。恐怖が王者を襲った。

　吹っ切れたのは１１回。左フックをヒットさせると、挑戦者のサイドに回り込んで放った右フックがさく裂。最終の１２回にはロープ際の壮絶な打ち合いで猛ラッシュをかけた。「傷は全然深くない。大丈夫や」山下正人会長（４５）の“言葉の魔法”を、最後は信じた。

　煮えたぎる思いがあった。昨年６月。「もうやめたい」山下会長に緊迫した声で電話をかけた。所属していた千里馬神戸ジムから、トレーナーだった山下さんが解雇された０６年末以降、長谷川は相談相手を失っていた。王者の悲痛な叫びにおされて、山下さんが１０月に真正ジムを新設すると、「一生ついていきます」。現役チャンピオンでは初の移籍。２人の戦いが始まった。

　「夢はしばらく置いときましょうか」移籍騒動の渦中。長谷川が移籍に伴った借金返済を心配して、米国進出を封印し、国内防衛で着実に収益を重ねる提案を持ちかけた。しかし山下会長から「それはちゃう」と即答された。「夢がないと何もできへん。夢が人を動かすガソリンやで」恩師の言葉に胸が震えた。

　２０連勝。最強エースの称号は揺るぎない。それでも、夢の米国進出へＫＯ指令を出していた世界的プロモーターの帝拳・本田明彦会長（６０）は「あと一歩というところだった」と辛口評価。本人も「もう一度、満足する防衛をしないとダメ。短いスパンで試合をしたい」と来春にも実現する次戦に目を向けた。ラスベガスの輝きにたどり着くまで、王者の戦いは終わらない。

　◆長谷川　穂積（はせがわ・ほづみ）１９８０年１２月１６日、兵庫・西脇市生まれ。２７歳。９９年１１月プロデビュー。２００３年５月、ジェス・マーカに１２回判定勝ちし、東洋太平洋バンタム級王座獲得。３度防衛。０５年４月１６日、ＷＢＣ世界同級王座獲得。家族は泰子夫人（２８）と１男１女。戦績は２３勝（７ＫＯ）２敗。１６８センチの左ボクサーファイター。

参照元：スポーツ報知