巨人Ｖ９戦士が野口に太鼓判「みずきが負ける訳ない」

五輪連覇へ向け、野口に２つの強力サポートだ。８月１７日号砲の女子マラソンまで残り１か月。１６日は神戸市内のアシックス社で、女子代表らが本番で履くシューズがお披露目され、連覇を狙う野口みずき（３０）＝シスメックス＝は世界最軽量、１０５グラムシューズで勝負する。力強い同窓先輩からエールも届いた。三重・宇治山田商（旧宇治山田商工）出身で、元プロ野球巨人軍Ｖ９戦士の中村稔さん（６９）が、「みずきが負けるわけがない」と、合宿で“同じ釜の飯”を食った後輩の五輪Ｖ２に太鼓判を押した。

　今月初めに神戸で行われた激励会。壇上には、１９６５年に２０勝４敗でＶ９スタートに貢献した、元巨人軍エースの姿があった。野口の母校・宇治山田商同窓会で、東京支部長を務める中村さんがその人。関西を拠点にする野口応援団の関東部門を取りまとめている。

　出会いは６年前、２００２年のことだ。同窓の後輩に有望マラソン選手がいると聞いた中村さんは、所用で東京に来た野口を新橋のすし店に誘った。「よく食べたよね。マグロの赤身だけで３０貫以上かな。当時は酒も控えてなくて、ビールをグイグイいっていたよ」対面での“大物”ぶりに、将来の活躍を予感。翌年のパリ世界陸上銀、そしてアテネ五輪金をつかむなど、予感は的中した。

　さきごろの北京激励会では「みずきが負けるわけがない！」と断言した。“同じ釜の飯を食った”裏付けがあるからだ。中村さんがコーチ（７０～７７年）だったころから、巨人２軍キャンプの定宿は宮崎・青島の水光苑ホテル。野口も宮崎合宿の定宿に使っており、４月にも同所で練習したばかり。「縁浅からぬものがあるんだよね。現役選手と一緒に食卓を囲んだこともあるらしいよ。巨人軍と同じ飯を食って負けるはずがない」“Ｖ９魂”が受け継がれたことを確信している。

　勝ち続けることの難しさは、選手、コーチとして達成したＶ９の経験から分かっている。「ペナントレースはマラソンに似てるって言われる。どこかのチーム（人）が最初に飛び出すこともあるし、最後でひっくり返すこともある。でも、野球は毎日続くから、１試合１試合に集中できた。五輪は間が４年あくから、大変だったと思う」。この４年間、ひとつの目標に向け、気持ちを切らさなかった野口の精神力には感服するという。

　北京に持って行く日の丸の寄せ書きにも書いた「負ける訳がない」という言葉は、巨人軍時代から、中村さん自身が胸の中で繰り返してきた“勝利の言葉”でもある。激励会の席上で、「準備は大丈夫なのか？」と声をかけた中村さんに、野口は「はい！　順調です」と、力強い返事を返した。「絶対、勝つと思う」。女子マラソン史上初のＶ２の報告を母校に持って帰って来ることを、中村さんは信じている。

　◆桑田斎藤槙原走らせ育てた　○…高校時代の冬場に駅伝で好成績を出すなど、自身も走ることが得意だった中村さん。プロ入り後も“読売巨人軍陸上競技部員”と呼ばれるほど練習で走った。投手コーチとして、桑田、斎藤、槙原らを育てた秘訣（ひけつ）も「とにかく徹底的に走らせた」ことだという。そんな中村さんが、野口の走りについては「技術的なことは分からないが、みずきは人一倍練習しているよ。それでレースになれば、一番苦しい時に前に出るしね。勝負の勘もある」と絶賛していた。

　◆中村　稔（なかむら・みのる）１９３８年９月２８日、三重・伊勢市生まれ。６９歳。宇治山田商工（現・宇治山田商）卒業後、５７年に投手として巨人軍入団。６５年には２０勝４敗、防御率２．２１でＶ９初年度のスタートに貢献した。６９年に現役引退し、通算７２勝５３敗。引退後は巨人、ロッテでコーチを務めた。Ｖ９には、選手として５年、２軍コーチとして４年と丸々かかわる。現在は野球評論家、巨人軍ＯＢ会幹事。

参照元：スポーツ報知