山内一弘氏死去…ロッテ監督で２度前期Ｖ コーチとして原、掛布を育成

プロ野球初の通算３００本塁打を記録した往年の強打者、山内一弘氏が２日午後７時２６分、肝不全のため、都内の病院で死去していたことが５日、分かった。７６歳だった。自宅は非公表。近親者で密葬を済ませた。現役引退後はロッテ、中日の監督のほか、打撃コーチなどで各チームの後進を指導した山内氏の死去に、各キャンプ地も悲しみに包まれた。

　まさに「プロ野球人」にふさわしい一生だった。現役では３チームに所属し１９年プレーしたが、指導者としてはのべ９チーム。１９９８年には台湾プロ野球の和信でも後進を指導。この間、ユニホームから離れていたのは、５２年のプロ入りから４８年間でわずか６年間と現場にこだわった。

　愛知・起（おこし）工時代は投手だったが、川島紡績（現カワボウ）時代に限界を知って本格的に外野手に転向。そんな山内氏を大選手に導いたのは、「七色の変化球」として後に殿堂入りした、当時の若林忠志・毎日２軍監督からもらった「技術は人から盗め」「一人の目を大切にせよ」という２つの言葉だった。

　満足にコーチがいない時代に山内氏は、同じ右打ちのスラッガーで今年殿堂入りした青田昇さんの打撃を研究。内角へのシュートを腰の回転を軸としてフェアゾーンに打ち返す技術を身につけた。通算１６度出場した球宴でＭＶＰを３度受賞。「シュート打ちの名人」や「オールスター男」の異名をとった。

　さらに、「観客の中にお前一人を見に来ている人だっている。だから、どんな時でも力を抜くな」という教えを現役生活で守り続けた。６４年にはともにチームの中核だった小山正明投手との「世紀のトレード」で阪神移籍。７０年に広島で引退した時は試合出場、打数、得点、二塁打、塁打、犠飛と６項目で通算記録トップだった。

　卓越した打撃論を巨人・川上哲治監督に評価され、７１年から２軍打撃コーチに就任して、指導者人生スタート。自らが培ってきた技術を若手に仕込み、２度目の巨人コーチ時代には原辰徳・現巨人監督、阪神では掛布雅之（現スポーツ報知評論家）も指導した。

　２度の監督生活で８０、８１年とロッテに２度の前期優勝をもたらした。通算３３６勝３１３敗６３分け。２００２年の野球殿堂表彰式では、「我々は野球が大好きです。みなさん応援してください」とファンに応えた。また一人、昭和のプロ野球を彩った名選手が逝った。

　◆山内　一弘（やまうち・かずひろ）１９３２年５月１日、愛知・犬山市生まれ。起工から川島紡績を経て５２年に毎日（現ロッテ）に入団。３年目の５４年に外野でレギュラーとなる。６２年に和弘から改名。ベストナイン１０度。７０年に広島で現役引退。オールスター通算で打率３割１分４厘、８本塁打。外野からの送球で刺した通算１７５補殺は現在もプロ野球記録。現役引退後はロッテ（７９～８１年）、中日（８４～８６年）の監督を歴任。コーチとして巨人（７１～７４年、８７～８９年）、阪神（７５～７７年、９５年）、オリックス（９１～９３年）、ヤクルト（９６年）で指導した。

参照元：スポーツ報知