白鵬「綱の重み」責任全う横綱初優勝…大相撲秋場所千秋楽

　◆大相撲秋場所千秋楽　○白鵬（寄り切り）千代大海●（２３日・両国国技館）　横綱・白鵬（２２）＝宮城野＝が横綱となって初優勝を達成した。結びの一番で大関・千代大海（３１）＝九重＝を寄り切り、通算４度目の賜杯。朝青龍（２６）＝高砂＝の出場停止で、一人横綱となった重圧をはね返し、綱の権威を守った。九州場所（１１月１１日初日・福岡国際センター）では東横綱として名実ともに角界の頂点に君臨する。

　涙はなかった。白鵬は、静かに喜びをかみ締めた。千代大海を万全の寄りで下し横綱初Ｖ。「優勝したい気持ちが強かったのでうれしい。眠れないも日あった」“一人横綱”の重圧と戦った１５日間。朝青龍問題で揺らいだ日本の国技を守った。責任を果たした２２歳の青年の顔に、少しずつ笑みが戻った。

　綱の重みに苦しめられ続けた。新横綱の名古屋場所。「大関と違って横綱は負けられない」気負いから１１勝４敗でＶ逸。「横綱ってこんなに大変なものなんだ。ならなきゃよかった」冗談めかしながら、周囲に弱音を吐いた。

　“綱の重み”は体にも襲いかかった。土俵入りで着ける綱の重さは１３キロ。取組を２番取ると同じ大変さと言われる土俵入り。綱を落とすわけにいかず、きつく締め続けた結果、腰痛に襲われた。腰が高くなり相撲は安定感を欠いた。名古屋場所では毎日約１時間、付け人からマッサージを受けた。続く夏巡業でも連日の土俵入り。腰痛は慢性的なものになった。

　救ってくれたのは大横綱の教えだった。名古屋場所後に元横綱・大鵬の納谷幸喜相撲博物館館長と会食。「自分を磨きなさい。相撲は自分との戦いだから」３２回の優勝を誇る“先輩”の言葉が胸に響いた。「一人横綱？　プレッシャーはあったけど横綱は横綱。責任を果たせてよかった」名古屋では３日間だけだった朝げいこも今場所は１５日間皆勤。自覚を持った行動が結果につながった。

　目指すは人に尊敬される横綱。夏巡業でもファンサービスを欠かすことはなかった。自分のけいこと同時に若い衆を積極的に指導。「横綱が動いているのだから僕らもやらないと」付け人の１人は言った。育ての親・熊ケ谷親方（元幕内・竹葉山）も「自覚が出てきたよ」。九州場所で７勝を挙げれば初の年間最多勝が確定。「次の目標。もちろん優勝。３連覇」初場所には朝青龍が戻ってくるが、相手は自分。白鵬が新しい時代を築く。

　◆白鵬　翔（はくほう・しょう）本名ムンフバト・ダヴァジャルガル。１９８５年３月１１日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。２２歳。宮城野部屋。２０００年１０月来日。０１年春場所で初土俵。０４年夏、新入幕。０６年春場所後に大関昇進。０７年夏場所後に第６９代横綱に昇進。優勝４回。殊勲賞３回、敢闘賞１回、技能賞２回。金星１。得意は右四つ、投げ。家族は紗代子夫人（２３）と長女・愛美羽（あみう）ちゃん（４か月）。１９２センチ、１５５キロ。

参照元：スポーツ報知