浦和、オジェック監督解任…エンゲルス新監督で再建

開幕２連敗の浦和が１６日、ホルガー・オジェック監督（５９）を解雇し、後任にアシスタントコーチのゲルト・エンゲルス氏（５０）を昇格させる緊急事態に陥った。開幕後２試合での監督解任劇は、Ｊ１史上最速。人望ゼロだった前任者と対照的に、京都などＪ３チームで監督経験がある新指揮官は、対話路線を強調。３トップシステムの導入や、不振のＦＷ高原直泰（２８）の再生などのチーム革命で、全タイトル制覇を狙う。指揮は２０日のナビスコ杯、神戸戦（埼玉）が初陣となる。

　開幕２連続完封負けで、空中分解の危機に立たされた赤い悪魔が、いきなり禁じ手に出た。

　「今の状況を打開するには、指導者を代えるしかない」藤口光紀社長が１６日午後４時、会見を開いてオジェック監督の電撃解任とエンゲルスコーチの監督昇格を発表。０―２と惨敗した１５日の名古屋戦後の深夜、中村修三ＧＭと緊急会談を持ち、この日朝、２年前に自ら選んだ指揮官に契約解除を通告した。開幕２戦での更迭は、０４年Ｃ大阪ムズロビッチ監督の公式戦３試合を超える史上最速となった。

　当初は２０日のナビスコ杯、神戸戦の結果で判断するとされていたが、藤口社長は「雰囲気が重苦しい。一度壊れた選手との関係を修復するのは難しい」と説明。選手の自主性と攻撃性を、極端に制御するカリスマ性のない前任者と個性派軍団の間は完全に冷え切り「選手がピッチ上で躍らない」（藤口氏）状態だった。主力選手は昨季から、指揮官への不満を公言。造反したエースＦＷワシントンを、今オフに強制放出するなどで、不信感はさらに募っていた。

　そんな緊急事態で再建を託されたエンゲルス氏は、オジェック色一掃を打ち出した。「選手と仲良くするのは悪くない。今までと同じアプローチ」コーチとしての４年間は、友好関係を築いた選手と監督の調整役を務めてきた。日本語も堪能で、この日午前の初練習後も、早速、ＭＦ鈴木、阿部、高原と個別に青空会談。協調路線継続をアピールした。

　守備偏重の戦術面も一新する。０２年天皇杯を制した京都監督時代、現マンチェスターＵのＭＦ朴智星やルマンＭＦ松井大輔を擁して超攻撃的サッカーを披露しただけに「情熱的で攻撃的なサッカーを見せたい」と話し、３トップへの変更も提案。今季フランクフルトから移籍した高原の蘇生も明言した。「周囲との連係が足りない。だが、役割と行き方を与えれば大丈夫」２戦不発で定位置失墜危機のエース復活に全力を注ぎ込む。

　全タイトル奪取の目標は変わらない。新体制で常勝軍団が荒波を乗り切る。

　◆Ｊリーグ開幕からのスピード解任
  ▼Ｊ１　３試合＝Ｃ大阪・ムズロビッチ監督（ボスニア・ヘルツェゴビナ）　２００４年開幕戦で名古屋に１―２、第２節で浦和に２―４と連敗。ナビスコ杯の東京Ｖ戦で１―１で引き分け解任。アルベルト監督が引き継いだが、第１ステージ最下位。

　▼Ｊ２　１試合＝横浜Ｃ・足達勇輔監督　０６年開幕戦で愛媛に０―１で敗れ解任。後任の高木琢也監督が優勝に導き、Ｊ１昇格。

　◆ゲルト・エンゲルス　１９５７年４月２６日、ドイツ・デューレン市生まれ。５０歳。現役時代はＭＦとしてドイツ・ボルシアＭＧに所属。その後、アーヘン大などを指導し、９０年に来日。アセノＳＣ（現・Ｊ２水戸）、兵庫・滝川二高コーチを務め、９３年、横浜Ｆコーチに。９８年に監督に昇格し、天皇杯優勝。９９年第１ステージは市原（現・千葉）監督。２０００年に京都監督に就任し、０１年のＪ２優勝、０２年の天皇杯制覇を導いた。浦和では０４年からコーチ。

　◆イレブンは歓迎　○…イレブンは電撃交代劇を歓迎した。「ゲルトさんは俺らと監督の間で頑張っていた。今度は俺らがゲルトさんの花を咲かせたい」とベテランＦＷ岡野。人望厚いスーパーサブは、今季ベンチ外と前監督に冷遇されていた。ある主力も「状況が劇的に変わることはないと思うけど、間違いなく雰囲気は良くなる」と分析。選手との壁をつくった前任者と違うスタイルになることは、強豪復活の好材料だ。

参照元：スポーツ報知