山口無念、引退へ…ＷＢＣ世界フライ級王座戦

◆プロボクシングＷＢＣ世界フライ級タイトルマッチ　○内藤大助（ＴＫＯ　１１回１分１１秒）山口真吾●（２３日、両国国技館）　敗れた山口真吾（２９）＝渡嘉敷＝は引退が濃厚となった。

　山口が壮絶に散った。１１回にダウンを奪われた後だ。薄れる意識の中、王者に向かっていった。当たらなくても手は止めない。レフェリーが試合を止めるまで、打たれても打たれても、本能でパンチを出し続けた。

　意地からか、用意された担架に乗らず、ジムスタッフの肩を借りて自分の足で医務室に入った。「思ったより懐が深くて入れなかった…」一言口にするのがやっとで、病院に直行した。

　リーチは内藤より１０センチ短い。懐に飛び込むしかなかった。時にはノーガードからスキを誘い、左をヒットする場面も。渡嘉敷勝男会長（４８）によると、コーナーで「手応えがあった」と話した回もあったという。ただ、技術と体格の差はひっくり返せなかった。

　９歳年上の晶子夫人（３８）、７月に生まれたばかりの長男・和真くんに、ベルトを巻いた姿を見せられなかった。史上３組目の師弟世界王座は夢に終わったが、渡嘉敷会長は「頑張ってくれた。悔いのない試合だった」とねぎらった。

　宅配便会社とトンカツ店で時給１１００円のアルバイトを週６回して生計を立てている。「人生を変える」と宣言して臨んだ３度目の世界挑戦も実らず、同会長は「奥さんも子供も納得したと思う。できれば次の人生を歩んでほしい」と引退を示唆。幕引きとなりそうな試合は、胸を張れるファイトになった。

　◆山口　真吾（やまぐち・しんご）１９７９年１１月２５日、東京都武蔵野市生まれ。２９歳。９８年１０月、プロデビュー。２００２年２月にＷＢＣ世界ライトフライ級に挑戦も崔堯三（韓国）に１０回ＴＫＯ負け。０３年５月に東洋太平洋ライトフライ級王座獲得、３度防衛。０８年３月にＷＢＡ世界フライ級王座挑戦も坂田健史（協栄）に判定負け。家族は晶子夫人と１男。１５６・６センチの右ボクサーファイター。

参照元：スポーツ報知