安馬大関昇進確実！天国の父よ見てくれたか…九州場所１３日目

◆大相撲九州場所１３日目　○安馬（押し出し）雅山●（２１日・福岡国際センター）　関脇・安馬が大関昇進を確実にした。東前頭７枚目の雅山を押し出し、昇進の目安となる１１勝目。大関昇進に必要とされる「三役で３場所３３勝以上」のノルマを達成し、武蔵川理事長（元横綱・三重ノ海）は「昇進は期待できる」と太鼓判を押した。残り２日も連勝し、初優勝で昇進に花を添える。優勝争いは２敗で安馬と横綱・白鵬のモンゴル勢が首位を並走。３敗で平幕の嘉風が追う展開となった。

　悲願達成の土俵上。安馬は大きく息を吐き、静かに喜びをかみ締めた。昇進目安だった１１勝目。「うれしいですね。相撲はすごく難しいと改めて感じたよ」大関を確定的にし、支度部屋で少しだけ白い歯を見せた。モンゴルから来日して約９年。２４歳の青年が大きな“勲章”を手に入れた。

　１７９キロの雅山から重い突っ張りを受けた。だが、幕内最軽量１２９キロは下がらず逆襲して押し出し。「力強いいい相撲だった」元大関を下し、実力を見せつけた。

　武蔵川理事長は「大事なところで本来の相撲を見せた。昇進は期待できる。後は審判部がどう判断するか」と昇進に合格点。三保ケ関審判部副部長（元大関・増位山）は「（１２日目に）横綱に勝って相撲が良くなっている」と太鼓判を押した。

脳裏に浮かぶのは父・ダワーニャムさんの顔だ。相撲を愛する安馬が、一度だけ辞めようと思ったことがある。来日約１年半後、初めてモンゴルへ一時帰国を許された。懐かしい空気と人々。「日本に戻りたくない」相撲への情熱は冷めた。そのとき、父は優しくほほ笑みながら「男は目標を持ったら最後まで目指さないといけない。ここで逃げたら何をやっても成功しないぞ」と諭した。「そのひと言で期待を感じた。だから死ぬ気で頑張った。早く恩返ししたいから」それ以降、弱音を吐くことはなかった。

　だが、その父は息子の晴れ姿を見ることなく、０６年１２月２８日に交通事故により５０歳で他界。安馬は周囲が声をかけられないほど悲しみに打ちひしがれた。今でも酒を飲むと、思い出話とともに涙を流す。抱き合って喜ぶことはできなかったが、大関昇進は、モンゴル相撲の関脇だった父の番付を超える最高の恩返しとなった。

　残り２日。連敗すればイメージは悪い。「最後まで自分の相撲を取っていい成績を残したい」気を抜かず、狙うのは賜杯。勢いに乗り、一気に初優勝へと駆け抜ける。

　◆安馬　公平　本名ダワーニャム・ビャンバドルジ。１９８４年４月１４日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。２４歳。スカウトされ、０１年初場所で初土俵。０４年春、新十両。同年九州、新入幕。０６年夏、新小結。０７年夏、新関脇。三賞は殊勲４回、敢闘１回、技能４回。しこ名は師匠が年寄・安治川だった当時、「馬はモンゴルの象徴で人々が大切にする生き物」との理由でつけられた。１８５センチ、１２９キロ。家族は母と兄２人。

参照元：スポーツ報知