亜衣、北京大ピンチ！派遣標準記録に２秒届かず…競泳日本選手権

◆北京五輪代表選考会　競泳日本選手権第１日（１５日・東京辰巳国際水泳場）　アテネ五輪女子八百メートル自由形金メダリストの柴田亜衣（２５）＝チームアリーナ＝が、がけっ縁に立たされた。四百メートル自由形決勝を制したものの、日本水連が設定した五輪派遣標準記録２（４分８秒４３）に届かない４分１０秒３８で、五輪内定が見送られた。八百メートル自由形（１８日予選、１９日決勝）で北京切符を獲得すれば本番で四百メートルに起用される可能性もあるが、精神面の重圧と体調不良から精彩を欠いた状態で、絶体絶命のピンチに陥った。

　柴田は電光掲示板に刻まれたタイムを見つめ、両手で顔を覆った。この種目で世界選手権で２度表彰台に立った過去の実績が一切通用しない一発選考会の厳しさ。「何とも言えないです…」八重歯がキラリと光る亜衣スマイルはなし。試合後のインタビューでは声を震わせ、いまにも泣き出しそうな表情だった。

　この４年間、常に「金の重圧」を背負い泳いできた。「結果を期待されているのが分かる。自己ベストだけでなくメダルも取らなきゃならない立場」種目こそ違えど、金の呪縛（じゅばく）から抜け出せなかった。

　予選からおかしかった。不本意なタイムの４分１３秒２８で２位通過。アテネで逆転を演じた後半に爆発的に伸びる泳ぎは決勝でも不発で、派遣標準記録に２秒近くも及ばなかった。

　０６年に発症した腰痛は原因ではないとしたが「体調は良くない。きつかったといえばきつかった」と訴えた。「言い訳になるから」と詳細は明かさなかったが、柴田を８年間指導する田中孝夫コーチは、疲労の蓄積と精神面の重圧を指摘。「年を取るごとに疲労が取れにくくなっている。追う立場から追われる立場の苦しさもあったと思う。泳ぎもストロークが小さくなった分、余計なエネルギーを使った」と話し、中２日の短期間での立ち直りを願った。

　０５年、スピードをつけるため二百メートルに挑戦、成績不振だった０６年は千五百メートルにも挑み、昨年は四百メートルと千五百メートルで日本記録を樹立。前半から積極的に入る泳ぎも採り入れた。昨年１０月から１日約１万８０００メートルを泳ぐこれまでで最もハードな練習をこなしたが、皮肉にも裏目に出た形だ。

　八百メートルで派遣標準記録を突破して２位以内に入れなければ、五輪連覇はおろか、五輪へ道そのものが閉ざされる。「八百では絶対に派遣標準を切りたい」と悲壮な決意。心身両面で傷を負う金メダリストは、がけっ縁からはい上がれるか。

参照元：スポーツ報知