錦織８強逃す 世界ランク８０位台確定…テニス全米オープン

◆テニス　全米オープン第８日（１日、ニューヨーク・ナショナル・テニスセンター）　日本男子では７１年ぶり、オープン化後初のベスト１６に進出した錦織圭（１８）＝ソニー＝は、シングルス４回戦で世界１７位のフアンマルティン・デルポトロ（アルゼンチン）と対戦し、ストレートで敗れた。錦織は得意のストローク戦を展開して見せ場を作ったが、２２連勝中と絶好調のデルポトロにスキがなく崩せなかった。日本男子８６年ぶりの８強はならなかったが、次戦のＡＩＧオープン（２９日開幕・東京有明コロシアム）での勝利を誓った。女子ダブルスの杉山愛＝ワコール＝は準々決勝に勝ち進んだ。

　記者会見に向かう廊下で、１８歳は立ち止まり、じっと床を見つめて唇をかんだ。目に悔しさがにじみ出て、言葉は途切れ途切れに宙に止まった。

　「ちょっと疲れていました。特にメンタル面で疲れていたように思う。３勝して満足していたところもあったかも…。よくテニスを考えられず、最後まで消極的だった」

　素晴らしい立ち上がりだった。自分のサーブで始まった第１セット、いきなり３ゲームを連取。角度の多彩なフォアハンドを軸に、ボールをライン上に落とす絶妙のラケット技術。「エアＫ」の異名を持つ猿飛ショットなど、見て面白いテニスに１万人収容のアームストロング・スタジアムが沸いた。「錦織！」という日本人の声に、「ニシコ～リ」という違う叫びも。ニック・ボロテリーは満足げだ。１３歳から寄宿してきたフロリダ・キャンプの主催コーチである。

　「世界のテニスファンの大きな評価、それが一番の収穫だ。輝かしい未来をつかんだ。日本のファンは驚いてはいけない。もっともっと強くなる」

　だが、デルポトロの出来が完ぺきだった。１９歳と同世代ながら、１９８センチからのビッグサーブとリーチの長さを武器に、ここまで４大会連続優勝と急成長。トップ選手を倒して２２連勝中という勢いが、津波のように襲い掛かった。ストローク戦でもミスが出ず、錦織がギリギリ辛抱できなかった場面で差がついた。「相手のミスを待ったところがあった」と悔やむのはその辺だが、疲労はピークに達していた。父・清志さんによれば、普段は受けないマッサージをして会場入りした。

　「まだ１８歳で、５セットマッチの経験もわずかだし、１大会に１週間以上いたこともない。疲れがあっても不思議じゃない。明日になれば、どれほどすばらしい経験をしたか実感するだろう」

　グレン・ワイナー・コーチがそう話すには理由がある。テニスはポイント積算によるランキングが基本で、一喜一憂は禁物の世界。今回の活躍で世界ランクも１２６位から８５位前後が保証され、予選出場の負担から解放される。ショットの威力も証明され、後は場数を踏むだけ。しかも次は東京のＡＩＧオープンになる。「ＡＩＧは特別な大会です。ここで得た自信で必ずいい結果を出したい」猿飛ショットで錦織が故郷に錦を飾る決意を固めた。

参照元：スポーツ報知